平成30年度税制改正 -法人課税の改正-
所得拡大促進税制の拡充など、設備投資と持続的な賃上げを後押しする税制措置が多数盛り込まれています。
また、利益が出ているにもかかわらず賃上げや投資を実施しない大企業については、研究開発税制をはじめとした一部の租税特別措置の適用が認められないなど、投資促進のための改正も行われています。
中小企業向け 所得拡大促進税制の拡充
中小企業の賃上げをより強力に支援するため、税額控除率が拡大されます。また、過去の改正で複雑化していた制度がシンプルに整理されます。
改正後の適用要件
①給与支給総額が前年度より増加している
②平均給与支給額(従業員1人あたりの給与)が前年度より1.5%以上増加している
改正後の控除率
①前年度より増加した給与支給額の15%
②以下の上乗せ要件を満たす場合には、控除率25% ※控除額は、法人税額の20%が限度
【上乗せ要件】
上記②の要件における増加率が2.5%以上であり、かつ、以下のいずれかを満たしている
・教育訓練費の額が前年度より10%以上増加している
・中小企業経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われている
大企業向け 所得拡大促進税制の改組
適用要件に「一定額以上の設備投資を行うこと」が追加され、単に賃上げを行うだけでは税額控除が受けられなくなります。
適用要件
現行 | 改正後 | |
適用要件 | ①給与等支給額総額が平成24年度から一定以上増加している ②給与等支給額総額が前年度より増加している ③賃上げ率2%以上(平均給与等支給額が前年度から2%以上増加) |
①賃上げ率3%以上(平均給与等支給額が前年度から2%以上増加) ②国内設備投資額が減価償却費総額の90%以上である |
控除率 | 【給与等支給額】 平成24年度からの増加額の10% (上限:法人税額の10%) |
【給与等支給額】 前年度からの増加額の15%(※) (上限:法人税額の20%) ※教育訓練費を前年度より20%以上増加させた企業は20% |
租税特別措置の適用要件の見直し
日本企業の内部留保は増加傾向にあり、利益を投資に振り向ける企業がまだまだ少ないことが指摘されています。そのため、利益が出ているにもかかわらず賃上げや設備投資を行わない企業に関しては、「一部の税の優遇を使えなくする」というマイナスの改正が行われる事になりました。
制度の適用要件
①その事業年度の所得金額が、前年度の所得金額を上回っている
②平均給与等支給額が前年度以下である
③国内設備投資額が減価償却費総額の10%以下である
適用できなくなる租税得絶措置
①試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)
②地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(地域未来投資促進税制)
③情報連携投資等の促進に係る税制