平成30年度税制改正 -資産課税の改正-
平成27年度税制改正以降、久々に大きく変更されました。
事業承継税制の見直し
中小企業経営者の平均年齢は66歳まで上昇しています。中小企業庁の調査では、2020年ごろまでに更に数十万人の経営者が引退すると予想されているため、後継者への事業の引継ぎが急務です。
ところが、60歳以上の経営者のうち、廃業を検討している経営者が過半数を超えるという調査結果があります。
その理由としては「後継者不在」「相続税や贈与税が払えない」などが挙がっています。
そこで平成21年に事業承継税制が創設されましたが、適用条件の厳しさから、ほとんど活用されていませんでした。
特に「5年間平均で、雇用の8割を維持すること」の条件は中小企業にとって難しく、しかも要件を満たさなくなった場合には利子税の納付リスクもあり、経営者や専門家からも敬遠されていたのです。
事業承継税制(平成21年)
非上場株式等に係る相続税、贈与税の納税猶予
(非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の株式等を取得し、その会社を経営していく場合、納付すべき相続税額のうち、取得した議決権株式等(ただし発行済議決権株式等の総数等の2/3まで)に係る課税価格の80%の相続税の納税を猶予する)
先代経営者の要件 | 会社の代表者であった |
---|---|
後継者の要件 | 相続開始直前において対象会社の役員であること |
会社の要件 | 中小企業であること 上場会社・資産管理会社・風俗関連事業でないこと |
事業継続要件(5年間) | 5年間平均で、雇用の8割を維持すること |
事業承継税制(今回の改正後)
対象株式及び猶予税額の大幅な拡大 | 発行済議決権株式の2/3までだったものが100%に。 また、相続税の80%猶予だったものが全額に。 |
---|---|
対象者の拡充 | 先代経営者以外の人から贈与を受けた株式も対象に。 また、「1人の贈与者(経営者)から1人の後継者」だったものが、「複数の贈与者から複数の後継者(3人まで)」が対象に。 |
雇用確保要件撤廃 | 雇用確保要件を満たせなくなった場合でも、理由を記載した書面を都道府県に提出することで猶予は継続される。 |
一定の経営環境の変化で会社を売却(譲渡・合併)、廃業する場合に猶予税額の一部を免除 | 直近の3年間で2年間以上赤字だった、直近の3年間で2年間以上に渡って前年より売上高が減少している、後継者が経営を継続しない特段の理由がある…など一定の経営環境の変化で会社を売却・廃業する場合、売却時廃業時の評価額から納税額を計算し、承継時の株価から計算された納税額との差額が免除される。 |
後継者が直系尊属でなくとも適用 | 事業承継税制を適用する場合に限り、後継者が贈与者の法定相続人でなくとも、贈与者が60歳以上であれば相続時精算課税の適用を受けることができる。 |
※この改正は、平成30年4月1日から平成35年3月31日の間に
・「特例承継計画」を作成する
・平成39年12月31日までに事業承継を行った
場合について適用されます。
特定の一般社団法人等に対する相続税の課税
一般社団法人がどれだけ多くの資産を保有していても、その法人の理事が代替わりした際に相続税が課税されることはありませんでした。
つまり、一族で支配する一般社団法人に資産を移すことで、実質的に永遠に非課税で資産を承継できてしまうのです。
今回の改正で、「特定一般社団法人」の役員が死亡した場合、その法人に対して相続税が課税されることになりました。